コンプライアンスの難しさ

コンプライアンスとは、(要求・命令などに)従うこと、応じることを意味する英語ですが、

近年、この言葉を聞かない日がないくらい新聞・テレビで繰り返されます。

しかし、本質的に法律というものは矛盾を抱えるものであり、

それを厳密に守ろうとすることで無理が生じる場合が少なくありません。

例えば身近な例で考えてみると、、、


あなたは金融マンだったとします。

ある日、あなたの顧客であるおばあさんから電話がありました。

「どうしても今日中に2万円欲しい。残高はあるはず。
 自分は歩けないから大変申し訳ないが、来てくれないか」

通常、ある程度の規模以上の金融機関は2万の現金を届けに顧客のところへは行きません。

しかし、地域密着型の金融機関は例外です。

もっとも今日は月末、繁忙日。

ネコの手も借りたいぐらいの忙しさです。

あなたは思い出します。

このおばあさん、自分を孫のようにかわいがってくれて、

自宅に伺えば、世間話をしながらお茶を頂いたことを思い出します。

子供は5人もいますが、全員近くには住んでおりません。

おばあさんの「人には世話になりたくない」という性格が子供達を寄せ付けなかったからです。

時代とともに、そして自分の足が不自由になるたびにご近所付き合いも疎遠になり、

孤独な生活をしています。

本来、人に頼るのが嫌いな性格なのに、あの電話、、、

あなたは悩んだ末、上司にこう言います。

「今日はお昼弁当忘れたので、近所で食べてきます」

繁忙期のお昼の時間、当然1時間もありません。

あなたは車を飛ばして、おばあさんのところへ。

「こんにちは」

「ああ、すまないね。じゃあ印鑑はこれ。私、手が震えて字が書けなからあなた代わりに、、、」

「それだけは、、、お待ちしてますので おばあさん、ゆっくりと書いてくださいね」

「ああ、だって この手じゃあ、、、」

おばあさんは手が不自由でばかりでなく、目も不自由。

出金伝票の名前を書く場所さえおぼつきません。

加えて、金額欄などさらに枠が小さいのです。

それでもおばあさんは一生懸命ペンを持って、書こうとします。

震える右手を左手で押さえながら。

そして、待つこと15分。

あなたの携帯が鳴ります。

会社からです。

「随分、ゆっくりランチ食ってるようだね。コースでも頼んだか? リッチなご身分だねえ」

あなたは焦ります。

どうしたものかと。

そしてあなたは思い出します。

自分の財布に3万円入っていることを。


この後、あなたならどうしますか?



コンプライアンス法令遵守)自体は大事なことだと思いますが、

実際社会では杓子定規で図れないことの方が多いのです。

ここで私は、違反行為をしろ、とか 絶対するな、とは言えません。

法令遵守の難しさを痛感するのです。