考えるということ(Part4)

新3年生は修学旅行の時期。

私は時間を取って、必ず生徒に予定を話してもらいます。

そして、質問をどんどんします。

『で、この鎌倉散策、具体的には どこに行くんだ?』

『そもそも、鎌倉は何県なんだ? 地図帳持ってきて、出発してからのバスのルートを教えてくれ』

『え? バスのルートなんてわかんない? 予測してみろ、これが高速道路、こっから高速乗るんだろ? 学校から鎌倉まで道をたどってみよう』

『3日間の中で一番楽しみにしてるトコはどこだ?』

などなど。

帰ってきた後は、感想を聞きます。

『よーし、一日目からどこ行ったか教えてくれ』

『ふむふむ。美術館めぐりだな。で、どの絵がよかったんだ?』

美術史における印象派の位置づけについて講義開始(マニアックw)

『特別展示で版画か? いいなこのパンフは! 版画の構造について詳しく書かれてるぞ。図があるのがいいね。ほー なるほどなるほど。』

『ところで質問だが、版画と絵では何が違う? 焦点を絞ろう。絵と比べた版画のメリットは何だと思う?』

ここで生徒はしばらく『うーん』と悩みはじめます。

かなり悩んでます。相当悩んでます。

お助けで、そっとパンフの「版画ができるまで」の図を指差す私。

『印刷すること!』

惜しい、というかほとんど正解。

さぁ もう一歩踏み込むんだ。

『あ、たくさん印刷できる!』

『よし、正解。つまり商売になる、ということだな。昔、例えば本なんて相当高かったんだ。「写本」って言って全部手書きだ。今で言えば一冊数十万だ。だから、昔の知識人は貴族が多かったんだな。それが、版画だと、たくさん刷れる。昔の新聞みたいなヤツあるだろ? ああいうのは版画だな。 浮世絵なんかもそう。 では、江戸時代の有名な版画家1人あげてくれ』

葛飾北斎

よし。その後、葛飾北斎の生まれた時から晩年までのエピソード(長いので省略)

このやりとりに数十分。

生徒には、どんどん話してもらいたいのです。

そして常に なぜ? どうして? 

せっかく体験してきたのですから、何かを知識を得ないともったいない。

私が質問することで、思い出し、関連付けし、記憶が強化される。。。

担当する生徒、国語の力、思考の力、論理の力、

ガリガリ勉強しなくても、会話の中で育まれていけばいいな、と。


こんなこと、あんなこと、どんどん話てみたい。

人に何かを話そう、伝えようとしたとき、頭の中は色んな言葉が巡ります。

それがどれだけ国語の力に結びついてくるか!

作家の重松清氏はその著書の中で『文学書など読むより、たくさん片思いをした方がいい』

と言っています。極論ですが、その意味は深い。

『人に何かを伝えたい。でも上手くいかない。どうすればいい?』

その気持ちが、自分自身を成長させる。。。

はっきり言って、私の授業は雑談が多いです。

むしろ、雑談がメイン。

『は? 勉強? そんなもの自分でやれ。俺がいないときやれ。なんで俺が君に勉強教えなきゃいけないんだ。時間が勿体ない。俺は君と話しに来たんだ』

ぐらいの態度です。(極端ですが)

誤解のないように書きますが、

授業はちゃんとやります(笑)

そして、宿題チェックも必ずやります。

時には、抜きうちで昔の宿題を引っ張り出し、

『そう言えば、一ヶ月前のコレ。覚えているかどうかテストしてみよう』

当然、全体的な学習計画はありますが、

たまに、突然抜き打ちテストをすると、生徒側も気が抜けません。

『この先生は予告なしだからな。やっとかないとマズイ』

復習のクセをつけて欲しいのです。

教材に関しては、すべて市販のもの。

毎日、毎日、書店に足を運び、いいものがないか探してます。

短時間でもいいから集中できるような教材を用意。

集中力をつけさせるような授業をします。

一回の授業でワザと問題量を調整。

もう少しやりたいな、そう思わせるぐらいに。

雑談が多いので自然と生徒は欲求不満に。

『あとは宿題にする』

そうして、自分でやる姿勢を植えつけていく。

それを、何度も繰り返す。

はっきり言って、こちら側も我慢が必要です。

本当は、たくさん問題やりたい。

でも、はじめからそれをやったら、生徒側がついてこれない。(耐力が無い)

そもそも、自分で計画的に、自主的に勉強できる子は

家庭教師はつけない訳でして。(例外はありますが)

ひたすら我慢の数ヶ月。

極端な話、定期テストすら無視。
(趣旨は親御さんに説明しますが)

そして、集中力と自主学習の習慣が一定以上ついた時、

一気に授業時間内の問題量を増やしていきます。

当然、雑談はほとんどしません。

宿題の量も増やしていきます。


はっきりいってリスクが高いやり方かもしれません。

しかし、いままでのところ、効果はあるようです。

問題は親御さんに、短期で効果は出ません。

少なからず、半年はかかります、と。

そのあたりをどう説明し、納得していただけるか、です。

受験までの日数、生徒の志望校、生徒の実力、

テストには現れない生徒の可能性。

それらを冷静に判断し、『ここからエンジンかけないとマズイ』という時期を判断します。

それまではひたすら我慢の授業。

この仕事をやっていておもしろいな、と思うのは、

『テストには現れない生徒の可能性』を発見した時。

私は雑談の中から探るようにしています。

ありとあらゆる分野の話、そうとうマニアックな話をします。

意外なものに生徒が興味を示すことがあります。

先日は、遠足でプラネタリウムに行った生徒が、

天体の話を熱心にしはじめました。そして話題はブラックホールの話に。

重力とは何か? あたりから説明するので大変でした。

そしてブラックホールの基礎的(基礎も何もないですが)な話をしたところ、

『何でも飲み込むって、飲み込まれた星はどこに行っちゃうの?』

、、、

、、、、

、、、、、

『はい。今日はここまで。あとは自分で調べてみよう。宿題にします。』

普段は授業時間無視する傾向のある私ですが、

その時はきっちり終了しました(笑)