東大入試問題を中学2年生にやってもらいました。

人生で東大の入試問題などまともに一回も吟味したこと無い私。

先日、書店で赤本(文系−前期日程)を購入。

社会の問題なら、私でも、せめて問題文ぐらいなら読めるのではないか?

高校時代に履修したことのない『地理』の問題にあえてトライ。

ん? これは、、、

思ったほど太刀打ちできないレベルではないな、、、

これは自分の先入観が邪魔をしていただけではないか?

中学生にもできる! (完璧ではないにしろ、問題ぐらいは読める)

そう思って早速中学2年生の生徒(社会の定期テスト平均して7割程度の実力)に試したところ、

予想通りの反応。

記述式の問題をかなりの精度で回答。

2005年 地理 第二問 設問B 『ウイグル族の宗教と食生活の特徴を60字以内で述べよ。』

『あ、テレビでこのあたりの人はイスラム教徒が多いってやってた。うーん、イスラム教の人は、えーっと、、、何か食べられないものありましたよね?』

『俺に聞くな。自分で考えろ』

『あ! お酒ダメ、豚肉もダメかも。』

『よし、それを字数に注意して文章化してみろ』

できあがった回答を見て、内心感動しつつも、ここは表情一つ変えずに

『君、字が汚いな。もう少し丁寧に書かないと減点の対象だぞ。気をつけろ』

『先生、俺、別な問題やってみていいですか?』

『ああ、ではここから1時間、自習にする。気合入れてやれ』

つまり、我々はいかに『東大』と聞いただけで、腰が引けているか、ということ。

その生徒はできそうな問題を探し、ああでもない、こうでもないと言いながら、楽しんでやってました。

『つまり、東大の試験とはいえ、学校でやってること、教科書、資料集、参考書を徹底的にやり、強い思考能力、考える能力を身に付ければ、かなり得点できるってことだ。 いいか、私大の問題の方が逆に難しいからな。』

何回も書いてますが、『人は先入観の虜』

それを取り払ったところで、フラットな立場で、好奇心を全開にすれば、知識と思考力は身につきます。

後は自分自身に対する『甘え』をいかに無くすか。

何回も書きますが、人間の価値はいい大学に入るばかりではありません。

ここで私が言いたいのは、『先入観は持つな』ということ。

それだけで人としての生き方、考え方が180度変わってきます。

『中学生に東大の入試問題をやらせるなんて、どんな意味がある?』

そう思っている方、是非、自分の生徒さん、子供さんに試してみてはいかがでしょうか。

なお、この生徒は、数ヶ月前に『アメリカで銃規制がされないのはなぜ?』と聞いてきた生徒。

その時点で、その質問の仕方、疑問の持ち方から、『これは、鍛え方次第で、、、』という予感が。

ただし、学年順位は真ん中より下。下の3割の層に入ってます。

潜在能力が十分に引き出されておらず、具体的な得点に反映していない状態。

私の『引き出す』能力がまだまだ未熟な証拠です。

以前より、この生徒との授業は、一般の問題はほとんど解いていません。

定期テスト3日前ですら、全体の8割は雑談。

『一問一答? そんなのは俺がいない時やれ』

問題に対する疑問の持ち方を説き、辞書を使い、資料集を使い、図鑑を使い、百科事典を使い、自分で徹底的に調べ、安易に私に質問することを許さず、繰り返し、繰り返し『人間とはすぐに楽な方に流される。入試は「甘さ」を排除できないヤツから脱落していく』と精神的な強さを求めてきました。

ある時、『先生、俺、部活辞めたいです』と言ってきた時は、いつになく厳しく対応。

『君、それは二度と口に出すな。甘えるのもいい加減にしろ! 部活やってるから成績伸びないなどと思うな! いいか、ここは都会じゃないんだ、地方の生徒は、部活との両方平行して学力を上げていく、これが都市部の生徒にはマネできない優位性なんだ。文武両道、これが社会に出た時に、後に大きな意味を持つ。君はかつて、日能研行ってるやつらと、ある模試で一緒になったことがあると言っていたな。そしてヤツらにある種の気持ち悪さを感じた、と言った。それでいい。君は可能性があるんだ。部活辞めないと成績伸びないなんて短絡的過ぎるぞ。どんなに疲れていても、短時間でもいいから机に向かう。そこから強い精神力、強いハートが育つんだ。だから、いいな、約束だ。もう二度とそんな言葉は口にするな』

入試まで1年半、この生徒、いったいどこまで鍛えられるか?

早い時点でテストで結果を出させてあげたい気もするのですが、、、

しばらく我慢することにしました。

今は、一日三時間学習することを体に叩き込むことを最重要課題に設定。

この仕事をしていて感じるのは、

『若い』ということの絶対的な優位性。

そこには無限の可能性が。

正直、嫉妬すら感じることも。

だからこそ、安易に自分に限界を設定して欲しくないのです。

そして若いうちの一分一秒もムダにして欲しくないのです。

勉強も、部活も、人間関係も

目一杯頑張って欲しい。

時には自分を責めたくなるほど落ち込む日もあり、

時は嬉しさで飛び上がりそうな日があり、

そういう喜怒哀楽のある学生生活を送って欲しい。

本当に、本当に、この一生に一回しかない幸福な時期を楽しんで欲しい。

若さゆえ、自暴自棄になり、溢れるエネルギーを別な方向に持っていっている子供達を見ると、

『お前、大人になって後悔しても遅いんだ。気づいた頃は遅いんだ。タイムマシン売ってるなら別だけどな』

と言ってやりたくなります。

ましてや自分の命を絶つなどもってのほか。


都内女子高生が自殺
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070530k0000e040072000c.html


この生徒にどんな事情があったのかはわかりません。長く思い悩んでいたのか、発作的行動なのか、、、

とかく思春期は『世界で一番、自分が不幸だ』などと思ったりしがちです。

相談する人はいなかったのだろうか?

何か没頭できることはなかったのだろうか?

好きな人はいたのだろうか?

彼女とは全く関係ない立場の私ですが、ちょと考えてしまいました。

そうは言っても私ができることといえば、目の前の生徒に対してのこと。

今日も 明日も あさっても

生徒の可能性を引き出すため、自分に何ができるか

考えていきたいと思います。